グレゴリオ聖歌の楽譜が羊皮紙に草木の染料で書かれた物をパーチメント(perchment)と言う。
この羊皮紙はかなりの耐久性があり、ヨーロッパでパピルスに代わり中世末頃まで使用されたらしい。
この独特の質感を持つラテン語の大型の楽譜は長年教会で使用され、その後一枚ずつにバラされ今は上質なインテリアとしても少しずつその美が評価されて来ている。

パイアタウンという小さな海沿いの町がある。古くはサトウキビ栽培が盛んな時代に栄え、衰退し、そしてその後ヒッピーとサーファーが住み着き、自然発生的にできた小さな店が軒を連ねて今は観光客もやってくる人気の町になってきている。
10年前にこのオールドタウンが気に入り、今回再び訪れた。狭いエリアの中に石釜ピザ屋、コーヒー豆屋、シーフードの食堂、ジェネラルストア、サーフショップ、ビーズ屋、古着屋、ギャラリー、アイスクリーム屋などが連なり魅力的な界隈を形成している。
私は、アーチスト、ミュージシャン、ゲイ、サーファー、ヒッピーといった人たちの中に、時代を感じとるアンテナや嗅覚が優れている人の割合がかなり多いと思ってるところがある。
デベロッパーが綿密なデータやリサーチを駆使し計画する大型ショッピングモールには醸し出せない味をこの町は持っているし、人々の価値観も少しずつシフトして来ている。少なくともこの町角に立っているとそういったことを感じる。
マウイのラウニヤポコビーチパークはとても整備されていて、トイレやシャワー以外にもバーベキューグリルや犬のフン用のビニール袋の無料ディスペンンサーが設置されていたりする。大きな木々が気持ちよい木陰をつくり芝生の上でフェミリーやカップルが思い思いに過ごしている。当然ゴミなどは落ちていない。
20世紀型消費システムが終わりを迎えているが、このビーチに立っているとお金を使わなくても自然の中で気持ちよい時を過ごしそれが幸せの形として定着している姿を垣間見ることができる。
「moleskine」という名の手帳をジャーナリストの女性に教えてもらってから愛用している。シンプルこの上ない作りながら、モグラ肌という名前のとおり表紙のザラザラとした独特の手触り感や硬さ、全体の仕上げの適度な粗さというものが使っているうちに魅力的に思われてくるから不思議だ。
かつては、マチスやヘミングウェイ、チャトウィンも愛用していたらしい。確かに旅に持っていきたくなる要素に富む。軽くて丈夫。ゴムバンドがついているので切符やレシート、葉っぱなど挟める便利さもある。私は気になる雑誌の切り抜きを貼ったりしている。
多機能なものよりシンプルなものの方が使い方の可能性を感じてしまうのが面白い。
重くてかさばるシステム手帳を使った時代もあったが、いろいろなガジェットが発達した今はこの手帳がベスト。
私が小さいときから近所の呉服屋さんが年末になると日めくりカレンダーをくれた。婚礼衣装を着た花嫁さんが台紙になっていたりした。子供の頃はカレンダーなどあまり興味がなかったが、カフェを始めた頃ビーチでペンキのはげた小さな流木ならぬ流ボードを拾ったことがあった。
その時なぜかこの板に日めくりカレンダーを付けようと思い立った。それから数年後その呉服屋さんは日めくりカレンダーを作らなくなった。
そして今、呉服屋さんは無い。
それからは東京の文房具屋で日めくりカレンダーを探して手に入れている。
日めくりカレンダーは、昭和の茶の間のにおいがする。