カフェを開店したのが30年ほど前でした。
カフェの道を挟んだ向かいには昭和を感じさせるホテルがあって、カウンターからいつもそのホテルを見ながら「この建物が無かったらどんな景色が広がっているんだろう」とか「きっと松林の間からチラッと海が見えたりして」なんて妄想混じりの叶わぬ想いを長年巡らせておりました。
そのホテルも7、8年前にご主人の他界をきっかけに廃業となり、売りに出されたと聞いていましたが中々買い手も付かず少しずつ荒れた状況になっていました。
海岸通りの目立つ場所にあるホテルだけにこのまま廃墟化して行ったら寂れた町の印象になってしまうんじゃないかって心配していたんです。まして店の目の前ですから・・
ある時そのホテルを買ったという東京のご夫婦の方が店に挨拶に見えました。
お話を伺うと、ここから見える海の綺麗さに惹かれたのだとか。そして建物の一部を残してセカンドハウスとしてリノベーションすると言う事でした。
「救世主現る」とはこの時の私の心境です。
そしてしばらく後、昨年秋から年末にかけてカフェの前部分の取り壊し工事が始まりました。
残念ながら30年の間に松林も成長し隙間から海を望むことは出来ませんがヤシと松林の間を気持ち良い風が吹き抜けていた。
ありがたい・・