喪失感

町から本屋が消えていると聞いて久しい。

そして私の町の本屋も突然シャッターを下ろし消えた・・

 

そこは十代の頃から何十年と通った本屋だった。

穏やかな波長の店主と他愛ない会話をよくしたものだった。

今の時期なら「今年の花粉はキツイね!どう鼻の具合は?」などと。

雑誌を立ち読みしていると飼い猫が私の足に絡んできたり。

そうそう、私が二十歳くらいの頃、アルバイトのお姉さんがいて私より三〜四歳年上だったかな。

柔らかな雰囲気をまとった綺麗な女性で、会計の時ドキドキしていた記憶がある。

(不思議なもので、今その女性は時々私の店にランチを食べに来てくれるのだが・・)

 

思い出多かった町の本屋が消え去り、私のアイデンティティの大切なカケラも何処かに行ってしまった。

この平成はそんな喪失感と共に幕を閉じつつ有る。

シャッターを閉めてから少しした後、その姿は消えてしまった・・貴方にも有る事でしょう!自分のオアシスのような場所を喪失した経験が。

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