一年ちょっと前、南房総の一軒の名店が25年の歴史に幕を閉じた。
その店「セントシュバイン」は、田園を見下ろす高台にあって手作りドイツソーセージ&ハムが絶品のヨーロッパの田舎にあるようなラスティックな雰囲気漂うレストランだった。
オーナーのM氏とは歳も近く、店を始めたのも同時期だったので私も色々刺激をもらっていた。
店を閉めてから何をしているのかと思っていたら「新しい店が出来上がったので一杯やろう」というお誘いがあった。なんでも実家の一部を改装して一人で切り盛りするバールを作ったのだという。
当日、千倉の波乗り仲間でその店に足を踏み入れるとM氏は秘蔵の泡を用意してくれていた。1985年のドン・ペリニヨンだった。この男、やはり只者ではなかった。
黄金色に輝く液体は生きていた。そして美味すぎた。今でもあの味の余韻が口内に残っている程だ。
ひとしきり幸せな時間を過ごしていると着物姿になったM氏が裏の茶室に来てくれという。侘びた露地を行くと見事な茶室が。にじり口から中に入ると静寂な中に茶釜のシュンシュンという音が飲んで高揚した気分を鎮めてくれる。
M氏は一人ずつ違う茶碗で茶を立ててくれる。
飲んだあとの抹茶の美味しいこと!
この一連のもてなしの気持こそ「お茶」の精神なのだろうが、なかなかここまで出来るものでは無い。
粋でチャーミングなM氏は、これからの人生をバールの親父とお茶の師匠(裏千家)の二足のわらじで過ごすらしい。
波乗りするお茶の師匠ってカッコイイですよね!