スーパーの駐車場に車を止めた私はしばらくの間、車から降りれなくなった。
パブロ・カザルスの「無伴奏チェロ組曲」(プレリュード)がラジオから流れて来たから。
何でもカザルスがバッハのこの運命の曲と邂逅したのが13歳の時、そしてそれを初めて人前で演奏したのが25歳の時だったという。自分が納得するまでの12年ということか・・
そして、毎日この無伴奏チェロ組曲から弾き始めるのが日課だったというカザルス。80年以上弾き続けたカザルスの無伴奏チェロ組曲の演奏は、私の中の深い所にある何かを揺さぶって来る。大きく優しく包み込む人間的な調べで。
私は、人間てスゴイことが出来るんだ、とスーパーの弁当を選びながら思っていた。