ある人々は、ルイヴィトンやゴヤールの大きなトランクをいくつも持ち込み長い船旅を優雅に過ごした。
また、ある人々は移民として故郷を捨て遠い異国の地を目指した。トランク一つで船底の大部屋にギュウギュウ詰めになりながら。
私は、そんな大型客船全盛時代に思いを馳せ、この客船をオーダーした。どこに置くかも決めず、値段交渉もせずに。
そしてひと月強を費やし完成したこのフローティングホテルはカフェのカウンターに停泊している。
全長80センチ。ゆったりとした時間を内包しているこの客船は、私が旨い酒を飲むためのイマジネーションツールでもある。