パンスペルミア説

押しも押されぬ世界的アーティストとなった写真家であり現代美術家の杉本博司氏。この人のアクションに私もいつも注目しているが、最近カ-サ・ブルータスで読んだ杉本氏の文に興味深い事が書かれていた。

「パンスペルミア説」……宇宙から飛来する隕石の中にアミノ酸を含む物があり、それらが太古の海面に激突した衝撃でアミノ酸と海水が反応し原初の生命体が地球上に誕生したとする仮説。

それから何億年たったろうか?氏はこの仮説を元にした虚構の作品に写真という装置でリアリティーを与えた個展を地元NYで開いた。あまりに確信を持って語られる嘘には真実が宿るものらしいと付け加えている。

杉本氏の周到で緻密、完璧ともいえるコンセプトはコンセプチュアル・アートの生みの親、あのマルセル・デュシャン譲りのようだ。デュシャンは死後益々その影響力を増している稀有なアーティストだと氏は認めている。私は同じ意味で利休もそうだろうと思う。

私の好きな「海景」「劇場」などのシリーズ満載のモノクローム写真集。最近は建築、古美術とのコラボ、文楽プロデュースなど止まる所を知らない杉本氏。「現な像」など書く文章も読む側を触発する。
私の好きな「海景」「劇場」などのシリーズ満載のモノクローム写真集。最近は建築、古美術とのコラボ、文楽プロデュースなど止まる所を知らない杉本氏。「現な像」など書く文章も読む側を触発する。
「海景」シリーズより。画面を二分する何も無いモノトーンの海と空。古代人の見た景色。しかし見方に正解は無い。この写真は見る人の考えを映し出す装置なのだ。
「海景」シリーズより。画面を二分する何も無いモノトーンの海と空。古代人の見た景色。しかし見方に正解は無い。この写真は見る人の考えを映し出す装置なのだ。
誰も観客の居ない古い劇場で映画を上映。上映しているあいだシャッターは開かれていた。つまり映画1本分の情報が白く光った幕に入っている。情報過多、露出オーバーで時間が溶解する。氏の言葉を借りれば「時間の概念を写した」。
誰も観客の居ない古い劇場で映画を上映。上映しているあいだシャッターは開かれていた。つまり映画1本分の情報が白く光った幕に入っている。情報過多、露出オーバーで時間が溶解する。氏の言葉を借りれば「時間の概念を写した」。

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